令和6年2月10日(土)

令和6年2月10日(土) 晴れ
 鮎魚女を釣らんと俄かに思い立ちて、師崎港9時45分解纜の高速船で篠島へ渡島す。9時55分着。篠島とは数えて20年近く疎遠なれば、釣況詳らかならず。不敢取は昔日の記憶を頼り、徒歩にて釣場を目指したり。凡そ半刻後、目指せる処へ到達す。但し立入禁止の表札有之。踵を返して他所を当たるも、加齢が祟りて脚力が及ばず。途上で断念す。已む無く乗船場近くの足場良き場所にて竿を出したり。以前訪島の折には見かけず。近年整備されしか。斜面に平置きされたる井桁状の混泥凝土塊が沖まで配置されし。海苔若しくは海藻の類、井桁に付着して根魚数多潜めると推定されたり。時刻は11時。12時半に底りなれば、既に海面下部分も相当露呈す。藻類に足場を取られぬよう歩を進め、7尺中通し竿、餌は釜揚げ桜海老を用い、隣接せる井桁塊の隙間へと投入せり。砂礫に埋まり穴は深からず。更に潮引きて沖の隙間の視認容易となり、漸く深き隙間へと投入叶いし。錘の着底を確認し、暫し俟ちたり。突如穂先が締め込まれ、刹那の合わせで海面より上げられしは、見当10糎程の笠子なれど、鉤より外れて落水す。続いて銀宝らしき長物を外したり。伊勢尼8号より5号に変更す。功を奏して先に釣れし程の笠子が鉤先に掛かれり。足場宜しく乗船場至近の処なれば、場荒れは避けるに能わず。而して小物許りは致し方無之。長竿に替え、沖の沈み根を狙うより他に術は見当たらず。一旦戻る可しと顧みるに、随分と遠くへと歩きたり。戻る手間を惜しみ、7尺竿の儘で続行す。暫し後、竿下に根魚が如何にも潜める様相の深き狭間が目に止まれり。投入の刹那、穂先の微かな抑え込みで合わせるに、待望の鮎魚女が掛かりし。長寸は23糎。胴太く魚体に黄金色を帯びたり。鮎魚女に如かず。近縁の久慈目なり。未だ残れりかと、同じ狭間へ落し込めば、復た久慈目を確保す。鮎魚女に非ずと雖も、釣果に不満無之。小物を屡屡釣りたる中、13時半に20糎の笠子を釣りて、波高まりし14時に納竿す。〆て3匹。14時25分出帆の便で篠島を後にす。帰宅後早早に、釣れし久慈目と笠子を煮付けたり。味付けは酒と醤油、砂糖のみ。濃い目に仕立てし。笠子は些か磯臭き癖有之。然れど久慈目の身は硬からず、身色は真白く木目細かし。舌触り宜しけれぱ、嫌な癖も感ぜられず。微かな甘みを含み甚だ旨し。久慈目は鮎魚女に劣るとの世評乍ら、食味に遜色無之。一入の味わいを堪能したり。