令和5年4月15日(土) その2

【台鉄汐止駅】OLYMPUS XA F.ZUIKO 35mm/F2.8 FUJIFILM SUPERIA X-TRA400

【台鉄汐止駅】OLYMPUS XA F.ZUIKO 35mm/F2.8 FUJIFILM SUPERIA X-TRA400

【台鉄樹林駅】kyocera G’zOne TYPE-XX

【台鉄新竹駅】kyocera G’zOne TYPE-XX

【台鉄新竹駅】平成28年10月4日撮影

【台鉄海線車窓】OLYMPUS XA F.ZUIKO 35mm/F2.8 FUJIFILM SUPERIA X-TRA400

【台鉄海線車窓】OLYMPUS XA F.ZUIKO 35mm/F2.8 FUJIFILM SUPERIA X-TRA400

【承前】汐止駅歩廊階下の改札を一旦抜け、復た踵を返して台北方面の歩廊へと上がれり。ようやく雨は止みし。高架線の歩廊より展開の景色は、丘陵の住宅地と背後に山稜在りて、晴れの日ならば良き景観とぞ思えり。然りながら本日はそれも能わず。7時2分発、区間快車(快速列車)2007次に乗りて汐止駅を後にす。2007次に充てられしは新型車両のEMU900型なり。首都圏を走る通勤型車両ながら、従前の車両と同じくセミクロスシートを踏襲しつつ、これらと比して背凭れ高し。座り心地もまた良ければ、長き乗車にも疲労は少なしと推測されり。週末の土曜日にて用務以外の乗客多し。南港、台北で概ね下車す。但し乗り込む客もまた多くして混雑せり。地下区間を出でれば再び雨となりし。樹林、桃園、中瀝などの主要駅に止まりつつ、快速に小駅を飛ばし、定刻の8時54分、新竹駅へと到着す。新竹駅は優等列車も停車の一等駅なりて、バロック式なる古風にして瀟洒なる駅舎は、台湾鐵路局内に於いて今や最古となれり。嘗て駅前にて観賞する機会之有。本日は車室より裏側を眺める而己。表に比して裏は案外簡素なれば、下車して観たいと欲せども能わず。他日に期すべしと祈念して、暫し停車の新竹駅を後にせん。新竹を出で、列車は道路と沿いて走るに、数多の家具屋が並びたるを窓外に見ゆ。新竹を出るといつも決まりて在りし景色なれど、何故か心に留めし。今日も亦、これを眺めるに開店前のせいか、いつもの活気之無。しかのみならず、以前よりも店の数少なきとぞ思いて、些か気になれり。竹南駅で山線こと台中線と分岐す。ここより海線へと入れり。海線とは通称にて、こちらは縦貫線の儘なれど、嘗ては台中方面への山線が本線を担いし。然るに山岳線なれば勾配険しく、嵩の大きな長編成の列車は不向きなり。これを是正せんと敷設されたのが海岸沿いの海線にて、竹南-彰化間の開通後は縦貫線、従前の区間は台中線(山線)と名付けられ、通称を以て山線、海線と呼ばれし由。本邦でいうならば、東海道本線と御殿場線、或いは山陽本線と岩徳線の関係に相似たり。戦前の『鉄道省編纂汽車時間表』(昭和9年12月号)を紐解けば、各等座席車と食堂車のみ連結したる昼間の急行列車(第1,第2列車)は山線経由なれど、一二等寝台車及び食堂車、座席車を連結せし夜間の急行列車(第3,第4列車)は海線を走りける。とはいえ戦後は列車の動力性能が上がりて、この区間を短絡の山線直通列車多し。然らば則ち、乗車の2007次は台北方面より乗り入れたる稀有な列車といえり。海に沿うと雖も、やや内陸を走る故か、意外に海の眺望は機会少なし。河口近くにて渡る川幅の広きを以て海に近しと思えり。丁度干潮時のため水は僅少にて底が露となりし。ただ、海風を利用して発電用の巨大な風車が数多立てられたり。海の見ゆる区間に差し掛かれば、遥か沖まで風車は立てられしも、生憎の無風で風車は動かずして観覧能わず。新竹より1時間ほど走りて、9時41分通霄駅着。当駅での下車客多し。曾遊の地にて、駅近くの丘陵を登りたる先に通霄神社が未だ遺れり。空は既に明るければ、列車を降りて復た参詣せんと思うも、台北より南下を続けて気温は上がりし。天気予報では摂氏30度を超えの由。荷物を担いでの参詣は、加齢を顧慮して為し難しと諦念す。この辺りで海岸線より内陸に線路は移りたり。10時27分発の大肚を過ぎれば、終着駅彰化の一駅手前に木造駅舎を見ゆ。追分駅なり。成追線との分岐点にて、正に駅名の如し。同駅名は本邦の北海道及び秋田県に存し、何れも意味を同じくす。乗りたる列車は通過すれども、嘗て下車したる砌、戦前より建ちたる駅舎はセメント製の瓦を拭きたり。近年、痛み著しく改修工事を施されつつありと仄聞す。ここより分岐せし成追線は、縦貫線と台中線を結びし短絡線なり。すなわち海線の列車を台中へ直通させる目的の路線にて、彰化駅での折り返しを要せず。近畿日本鉄道の名古屋線と大阪線を結ぶ通称中川短絡線と同類なり。戦前の急行列車も山線経由の夜行便は短絡線を介して台中駅に停車。当駅で編成を逆にし高雄方面へと向かへり。また上り列車も斯くの如し。現在は短距離の区間車が往復する而已。台中市と彰化県との境を流れし烏渓の鉄橋を渡りて、定刻より1分延着の10時40分、列車は終着彰化駅の歩廊へと滑り込みたり。